今年も無事に秋をむかえた。
ということはつまり。
今年も無事に新米が食べられる。
そして今年も自動的に。
夫の実家の新潟からはコシヒカリの新米が。
私の実家の青森からは青天の霹靂の新米が。
同じタイミングで、
神奈川の我が家に届けられる。
私はこの時期だけに米袋に貼られる、
"新米"
のシールが好きだ。
意味不明にギラついていて、
めでたさと
せつなさと
こころづよさ
がある。
(‥ん?)
私がMacBookにステッカーを貼るタイプの人間なら、
迷わずこのシールを貼るし。
私が人の道を外れた時には、
迷わずこのシールを盗むだろう。
(やめれ)
そしてつい先日、
夫の祖父母宅より新米が届けられ。
昨夜、
パリのファッションウィークよろしく、
新米ウィークが開幕した。
私は白米で白米を食べるほどの白米好きで、
目には目を
歯には歯を
新米には梅干しを
という謎の心得をもっている。
しかし‥
昨日の買い出しの際。
私の遺伝子はささやいたのだ。
『"禁断のチーズご飯"もオヌヌメよ』
と‥
※説明しよう!
"禁断のチーズご飯"とは、炊きたての白米の間に溶けるチーズを挟みこむといった、わたし的デブ飯のことなのである。
上下の白米の熱で溶かされたチーズは糸を引き、食べた者たちを黄泉(よみ)の世界ならぬ美味の世界にいざなう。
チーズの塩味と乳製品独特のコクが、白米の魅力を最大限に引き立て、箸よりもしゃもじの動きを止めなくする。
白米好きなら誰しも、この食べ方の危うさを知っているだろう!
遺伝子にあらがうことができなかった私は、
せめてもの気持ちで、
一番枚数の少ないスライスチーズをカゴにいれた。
買い出しに出かける前に、
炊飯器のスイッチをいれていたので、
帰宅後の我が家には新米の香りがたちこめていた。
新米は炊けた時の香りも違う。
どう違うのかは言葉で表現できないが、
強いて言うと、
単純に嗅覚が"うまそう"と判断する。
急いで夫と玉ねぎを追加して炒めるだけのお肉を調理し、
一緒に買ってきたたらこなんかも切って、
『納豆も良い』
『生卵も良い』
『梅干しは買わなかったから梅のふりかけじゃぁぁあ!』
『味噌汁に"追ワカメ"する?私はとろろ昆布するけど‥』
『韓国のりも食べたかろう!』
とドタバタしたのちに、
ついに新米様との対面の時をむかえた。
新米様は米粒の先が黄みがかっていて、
(そうじゃそうじゃ、これが新米様じゃ!)
と思った。
箸でひとすくいしてまずは一口。
静かにうまい。
細胞が目覚めるとかいうのではなくて。
素朴なうまみにハッとなる感じ。
ああ、自分は日本人なんだなぁ‥
と実感するような。
静かなうまみがある。
フランス人は。
アメリカ人は。
ブラジル人は。
インド人は。
エジプト人は。
なにを食べると、こんな感覚になるんだろう‥と、思った。
敬愛なるJ.D.Salingerなら知っていそうだ。
今は美味の世界に居るから、
黄泉の世界に行ったら聞いてみるとしよう。
※次回は10/5にあげます