日々のこと

昭和61年生まれの既婚子なしの女が、思ったことをだらだらと話すブログです。

ツクリバナシの話

中学生の頃、家が近所の子と一緒に通学していた。
その子は待ち合わせ場所に朝ごはんのパンを食べながら登場する"少し変わった子"であった。
「歩きながらものを食うな!」としつけられて育った吾輩からすれば、
それは十分に変わっていた。


彼女が食べていたパンが、


食パンだったのか‥
クロワッサンだったのか‥
元祖悪魔パン"ネオバターロール"だったのか‥
みんな大好き"北海道チーズ蒸しケーキ"だったのか‥
青春の味"ローズネットクッキー"だったのか‥


その記憶は定かではない。


しかし、
吾輩が中学生だった2001年には、
"北海道チーズ蒸しケーキ"のミニサイズは売ってなかったはずである。
まさかあの通常サイズの"北海道チーズ蒸しケーキ"を、
10分もしない通学路で食べきれるはずがない。


(じゃあ"ローズネットクッキー"かしらん?)
とも思うが。
あんな欲望と希望と絶望のかたまりみたいなパン‥
いや、
あれは"ローズネットクッキー"という名のドーナツではあるのだが。
いずれにせよ、
あやつを愛してやまない10代をおくってきた吾輩から言わせてもらうと、
まともな親なら、
あのようなものを朝ごはんに出したりはしない。
とか書いていると、
(うほ‥ "ローズネットクッキー"食いたいぞなもし‥)
さすが"欲望と希望と絶望のかたまりみたいなパン"‥
厳密には"ドーナツ"である。


(したらば‥元祖悪魔パン"ネオバターロール"だったのかねぇ?)


いいや。
待て。
待つのだ。
パンが何だったのかはそう重要ではない‥!
吾輩は"みんな大好きクラシック菓子パン"の話をしにきたのではない‥!


つまり、だ。
10代の何パーセントかをマンガに浸かって過ごした吾輩の脳は、


「いっけね!遅刻するー!」
とか言い。
食パンをくわえてあわてて家を出る。


‥的なシーンは、マンガの中でだけのことだと分別していたのである。


しかしそのシーンに限りなく近い光景
(彼女の場合、ゆっくり歩いてゆっくり待ち合わせ場所に到着していたのだが)
を目の当たりにした時‥
吾輩は
(本当にこんな人居るんだ‥)
と思ったし、
とにもかくにも可笑しかった。


生きている限り、
そんな可笑しな場面に出会いつづける(しかも無料で)のだから、
何かを失う日々でしかない人生も、
そう悪くはないように思う。
何かを得たという実感より、
何かに出会った感動の方が、
よっぽど効果があることを、
37歳の現在、
ひしひしと感じている。


一昨日、
会社の最寄駅に着いた時。
早朝の駅のロータリーで、
ワンカップのフタをあけているおじいさんが目に入った。
おじいさんは満面の笑みを浮かべ、
それに口をつけた。
絵に描いたような"飲んだくれじいさん"という感じがして、
吾輩は笑うのをこらえながら会社までの道を急いだ。


翌朝、
そのロータリーの少し先のところに、
機内持ち込み用サイズのスーツケースと、
その横で腰かける、
例の"ワンカップおじいさん"がいた。
スーツケースの持ち手部分には、
小さなホワイトボードがひっかけてある。
よく見えなかったが、
何やら文字が書いていた。
おじいさんはというと、
ストロングゼロと思しき缶チューハイを飲んでいた。


ホワイトボードにはおそらく、
物を乞うような文句が書かれてあったのであろう。


吾輩は、
"事実は小説よりも奇なり"
ということわざがとても好きなのである。

 

 


※次回は9/3に上げます