5年ほど前だろうか‥
小林聡美さん主演の"めがね"という映画を観て、
私は作中で使われていたと思しき、
背の低いビアジョッキを購入した。
鹿児島県の与論島(ヨロントウ)という南の島が舞台で、
浜や開放的なキッチン、
けっして広くはないが、
バーベキューをするにはちょうどいい庭といった、
半"外"のロケーションが印象的な映画だった。
小林聡美さん演じるタエコと、
彼女をとりまく地元民はいつも、
おいしそ〜に
しあわせそ〜に
まるでそこに自由があるかのよ〜に
背の低いビアジョッキにはいった、
こがね色のビールを飲んでいた。
たそがれに色があったのなら、
ちょうどこのビールのような色だろう。
"めがね"の主軸になるのは、
何を隠そう"たそがれ"だ。
当時の私の家には、
アメリカの食堂でバニラシェイクなんかがいれられている、
とにもかくにも"でかい"強化グラスしかなかった。
アメリカの食堂でバニラシェイクを頼んだら、
このグラスで出てきそうだと思って買ったので、
とにもかくにも"でかい"のはわかっていたし、
そこが気に入っていた。
そいつは今もなお、
私の日々のお茶用グラスとして活躍してくれている。
ビールだってそのグラスで事足りていた訳だが。
どうしたものか‥
"背の低い、ずんぐりとしたそのビアジョッキに入れられたビールが飲みたい!"
と、思ってしまった。
それからどうやって調べあげたのかはわからないが、
そのビアジョッキが"木村硝子店"という、
老舗のガラス専門店のものかもしれないという情報にたどり着いた。
iPhoneに映し出された小さな画像には、
一個3000円ちょっとと書かれている‥
"3000円ちょっと"なら買えなくはない。
二個買って6000円強‥
まぁ、買える。
まぁ、買えるから、
まぁ、買うことにした。
まだコロナ云々ではなかったため、
仕事終わりに湯島にある"木村硝子店"の路面店に赴き、
その場で我が家にむかえいれるふたつを選び、
買って帰った。
その後、
買って一年が過ぎようとした頃、
自分の不手際で一代目を失い、
コロナになってから、
これまた自分の不手際で二代目を失った。
今ので三代目となるが、
やっぱりコレでビールを飲むと幸せな気持ちになる。
ビールの後に安いワインをいれても、
ちゃんと幸せな気持ちになるのだ。
そしてそんな素晴らしい出会いのきっかけをつくってくれた"めがね"を、
つい先日、
数年ぶりに観てみたのだが‥
(むぅ‥??)
浜でみんなでビールを飲んでいるワンシーンで‥
なんとなく‥
(グラスの形が‥ウチにあるものと違くありません?)
グラスのたたずまいやら、
飲み口のデザイン。
何度見返しても、
(似て非なるものじゃ‥)
調べ直したところ、
"めがね"で使用されていたビアジョッキは、
私ごときのパンピーが手に入れられるような代物ではなく、
バカラと並んで有名な、
ロブマイヤーのものなのだそうな。
ロブマイヤーは6000円強だしたって買えやしない。
拍子抜けしたのと同時に、
なぜだか自分は幸せ者だと思った。
カンチガイして身の丈に合っていたのだ。
最高じゃねぇか。
※次回は3/29にあげます