日々のこと

昭和61年生まれの既婚子なしの女が、思ったことをだらだらと話すブログです。

【福田屋】@渋谷

水が美味しいところでなければ、
◯◯は美味しくないと思っていました。

とはいっても。
特別まずい◯◯は食べたことがないし、
そこまで高級な◯◯も食べたことがありません。

だからといって。
手頃な◯◯屋にははいる度胸もなく。

そもそも。
◯◯がそこまで好きじゃない。

まぁ。
深い大人の世界だと思っていたので、
あえてたしなむ必要もないと、
心の中で勝手に柵をたてていたことは否めません。

だかしかし。
駄菓子菓子ですよ、皆さま。

そういう時は突如としておとずれてしまうものだと。
夏のあの日。
私はしみじみと感じたのです。

例えば。
春野菜の苦味が語るうまさだとか。
疲れたからだにしみ込む糖分のうまさだとか。
そういうたぐいの“旨い”は、
たくさん生きて、
いろいろを経験しなければ気づけないものですよね。

その“旨い”に気づけたのが。
2017年の7月。
日本橋三越の地下にある◯◯屋さんに行った時のことでした。

まぁ、まぁ、これが実にうまくてですよ。
胃がずっと◯◯を求めていたかのように、
クツクツと喜ぶんですね。
からだにこうもスッと馴染んでしまうと、
老いを感ぜずにはいられませんが、
(ああ、私もついに、この境地に達したのか‥)
と、いつものようにわけのわからぬ持論に花を咲かせ、
不思議な心地よさをかみしめていました。
◯◯を“旨い”と思える我が体に、
(かんぱい!)
とそっと蕎麦湯をかかげました。

おっと。
いけない。

うっかり◯◯の答えを言ってしまいました。

松本で食べた信州蕎麦も、
福井で食べた越前蕎麦も大変美味しかった記憶があります。
山口の瓦蕎麦と新潟のへぎ蕎麦はいずれ食べに行くとして、
それよりも先に
“そばがき”
というものが一体全体どんなものなのか、
体験してみたいなと思う今日この頃。
まぁ、蕎麦屋で酒を飲む機会に恵まれるには、(あと10年は必要かしらん。)

今宵は渋谷で蕎麦を食べます。
蕎麦が嫌いだという人も、
いずれのためにお目通しいただければ幸いです。

話はかわりますが、
犬と猫を比べることは、
蕎麦とうどんを比べることに良く似ています。


////////////////////


勤務終了時刻がせまるにつれ、
私は胃袋に暗示をかけてゆきます。

(私は蕎麦が食べたい‥
私は蕎麦を食べる‥
私は蕎麦に“桃色片想い”‥!)

蕎麦ビギナーたる者、
このような暗示兼(けん)予習は必須‥!
でなければいつもの癖でラーメンが食べたくなって、
気づいた時にはつゆの最後の一滴を飲みほしていることでしょう。

定時となり、
いい具合に胃袋が蕎麦を求め始めたので、
私はさっさと会社を後にし、
渋谷を目指しました。

何度となく通ったいかがわしい路地にも慣れ、
その並びにあるアダルトグッズ屋のえげつないにおいに度々むせていたわたくしめではございますが、
今日はちゃんと息を止めて通りすぎることに成功‥!
かなり渋谷レベルが上がりつつあります。
(テテレ レッテッテッテッテー♪)
もちろん、ドラクエのレベルアップの時の効果音よ、ね。

そしてとある雑居ビルの2階にある蕎麦屋
【福田屋(ふくだや)】
に無事にたどりついた私こと福田。
自分の苗字と同じ店名にシンパシーを感じたから‥
と言いたいところですが、
単に渋谷にちょうどいい蕎麦屋がなく、
ここかあともう一軒の蕎麦屋で迷い、
今回は【福田屋】にしました。
渋谷という土地柄か、
お酒をメインにした蕎麦屋が多く、
居酒屋のような形態にさすがにひとりでは入れないなと思いました。
迷った方の蕎麦屋も日を改めてうかがいたいと思います。


////////////////////


「イラッシャイマセー!」
きれいな声で出迎えてくれた外国の若い女性に人差し指で“1”を示し、
私はひとりだという旨を伝えました。
お店は2階のみのワンフロア。
真ん中にある8人かけの大テーブルの一番端に通された私は、
コートを脱ぎ、
隣り席にバッグを置きました。

渡されたメニューを開き、
まだ少し肌寒いのであたたかい蕎麦の欄を見ていきます。
どちらかというと冷たい蕎麦の方が好きなのですが、
ここ数年はからだが欲するものに従った方が、
季節とともに生きているような気がするので、そういう選択をしています。

また、御多分に洩れず、私も自律神経の乱れに悩む三十路。
やみくもに体を冷やせる10代とは違います。
(トホホ‥)
まぁ、冷たい蕎麦とて今の時期じゃあキンキンにも冷やさないでしょうがね‥

そしてあたたかい蕎麦の欄で目に止まったものが2つ。
3月末までの限定品“けんちん蕎麦”と、
ネットの口コミで見た“おかめ蕎麦”という、
具材でおかめの顔を模した蕎麦。
(むむむむむ‥悩ましい‥‥‥
たくさんの根菜もいいけど、へんてこなおかめの顔も見てみたい‥‥‥)

旬をとるか。
興味をとるか。
(まぁ、どっちにしたって、味はそんなに違わないよね。)

厨房の手前で待機している先ほどの女性と目が合うのを待って、
私は控えめに左手をあげました。

「おかめ蕎麦をお願いします。」

「おかめ蕎麦デスネ、カシコマリマシタ。」

注文をし終え、
出された緑茶をすすりながら店内を見渡します。

赤ら顔で宴をする8人のじいさん。
白髪でショートカットのご婦人。
そして‥
私の前で仕事の話をしている50代と思しき、
2人のおじさん。
たぶん取引先とオーナーといった関係で、
取引先の方はしきりにオーナーを“会長”と呼んでいます。
(“会長”って呼ばれてる人、初めて見た‥)
去年あたりに夢中になったドラマ“黒革の手帖”では、
政界のドンをみな“会長”と呼んでいました。
現実の世界にもそう呼ばれる方が居て、
現に目の前にすると、
(さすがは渋谷!)
と思ってしまいます。
取引先の方が慣れた手つきで水割りをつくっておられ、
グラスに氷を落とした音が、
やけにきれいに響いていました。


////////////////////


「オマタセシマシター、おかめ蕎麦デス(ドンッ!)」

f:id:yucca6fk:20180329072940j:image

(これが下町カルチャー、おかめ蕎麦‥!
いやはや、顔になってるのう!かわいいのう!)
かまぼこの眉。
しいたけとにんじんの目。
ミツバと筍とお麩でできた鼻。
たまごの口。
香りづけに浮かべられた柚子の皮は、、、
(ストレスでニキビできたんやな。かわいそうに。)
おかめだってストレス社会を生きているんです。

さてと。
(ではさっそく、いただこうじゃないの。)
まずはプルプルのかまぼこから‥
(う〜ん、かまぼこ以上でも以下でもない!)
そうですね、後にのせているタイプのかまぼこだったので味がしみているとかはありませんでした。
しいたけ、にんじん、筍は良く味がしみていて美味しかったです。
たまごも甘くてお寿司屋さんのたまごのようでした。

肝心の麺はというと短くて食べやすい!
細く、やや柔らかめの麺はするすると食道を通っていき、
蕎麦らしいざらつきもあるので、
オーソドックスな蕎麦かなと思います。
また、麺に長さがないので、
汁がはねる心配が少ない。

甘めの汁はもしかしたら好き嫌いがあるかもしれませんが、癖はまったくありません。
蕎麦ビギナーなので蕎麦をどのように表現すればいいのか迷うところですが、
(うぬ、丁寧な味であった!)
というヌルッとしたビギナーっぽい感想でしめさせていただきます。
(う〜ん、おいしいんだけど、形容に悩むなぁ‥)
もうちょっと勉強しますです、はい。


////////////////////


食べ終えたので、
緑茶をすすりつつ蕎麦湯を待っていたのですが、
(う〜ん、出てきませんねぇ‥)
いっこうにでてくる気配なし。
求められるまで出さない店なのか、
店主が
「蕎麦湯っておいしくないでしよ!
自分でおいしくないって思うものは、お客さんには出せないでしょ!」
という考えの頑固おやじなのかなんなのか‥
しばらくしても、
やっぱり出てこないので、
(まぁ、いいっか!)
と思い、さっさとお勘定をしてもらいました。

奥深き蕎麦ワールド。
やっぱり難しいなぁと思いましたが、
それは私の日々の鍛錬が足らないためです。
はやく、
蕎麦を無意識で選び、
無意識で食べられるBBAになりたいです。
(あちき、がんばる!)