銀座線で渋谷駅に着いたものの、
あいかわらずどの出口からでるかで迷う。
改札付近には“〜方面”や“ハチ公口”と書いてあるだけで、
それが東西南北の内のどれなのか、
私の足りない脳みそと経験値では、
いまいちピンとこない。
東にヒカリエ。
北西に109。
北に西武や改装中のPARCO。
それがわかっていても、
頭の中で
“ハチ公口”イコール“北”
にはならない。
モヤイ像なんかはあきらかに西なのに、
その横の出入口だけはなぜか“南口”の表記。
JRの玉川改札なんかは一番のなぞ。
玉川ってなんスか、玉川って。
(はやく、渋谷の駅構内の工事終わってくんないかなぁ‥)
まぁ、終わったとて。
(私が迷わずに出れるとは限らないか‥)
まだまだ研究の余地がある。
そんなこんなで。
今宵も渋谷で、
(カウンター席、所望!!!)
声高らかに夕飯を食らいます。
カウンターのメリットは、
食べている姿を人に見られないところだと思います。
基本私は早食いなので、
(できれば誰にも見られずに店を出たい!)
常に食い逃げ犯のようなスピードで飯をたいらげ、
その行儀のわるいことったら‥
こういう習慣はいざという時に出るものなので、
人前では極力食べないという習慣を身につけようと努力‥
してるんだか、
してないんだか‥
(‥‥‥いいや、食べてるよ、あんた!)
まだまだ悟れません。
(グスン。)
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今晩行くのは、渋谷のはずれにある宮崎発祥の辛麺【辛麺屋 一輪(からめんや いちりん)】です。
以前、渋谷から恵比寿方面に歩いていた時。
とある十字路の一角に、
そりゃあ!
もう!
びっしりと!
ビン詰めされたトウガラシのオブジェが並ぶ、
一目で激辛料理のお店だとわかるお店がありました。
通りすがりに見た感じでは、
(カウンター席で、女性のお客さんが多いのね‥)
“女性向きの激辛麺のお店”といった感じです。
いつか行こうと心に決めていたので、
この度はこちらにオジャマンボウさせてもらいました。
(オジャマンボウってなんぞ?)
強く冷たい向かい風の中。
私の長い髪の毛は何度となく唇にはりつき、
それを33回ほど払いのけた時、
突如としてその店は姿を現しました。
(わかりやすく言うと渋谷駅から徒歩10分。
思いの外、歩きます。)
白いのれんにはポップな赤トウガラシのマーク。
すぐに自動扉のボタンを押し、右手にある券売機の前に立ちました。
(ほぅ‥定番は“辛麺”ってやつなのねん。)
看板商品の“辛麺”。
写真では真っ赤なスープにふんわりとした卵が浮かんでいます。
ニラも散りばめられていて、
赤×黄×緑のパーフェクトな色合い。
あとはそれの“トマト”バージョンと“パクチー”バージョン。
トマトがドサッと入ったのと、
パクチーこんもりの変わり種といった感じ。
まずはこの3種類から選びます。
辛さの段階は5段階まであり、それ以上は追加料金にて倍増可能。
麺はなんと中華麺、こんにゃく麺、うどんの3種類から選べて、その他にご飯という選択肢もありけり。
やはり定番主義者の私は“辛麺”にしませう。
(イエス、フォーリンラブ!)
と、心でとなえ、
ピコン!と券売機のボタンを押しました。
しかも。
ここの券売機ったら。
(最先端きわまりなし!)
ICカードが使えるんです。
常に交通系のICカードで生活している私からすると、
(だんけしぇ〜ん!)
非常にありがたい。
券売機からでてきた食券を小柄な女性の店員さんに渡し、
向かい合わせになった、
一枚テーブルのカウンター席に座りました。
向かい合わせといっても、
きちんと高い仕切りがあるので安心。
食べている姿は見えません。
店員さんに、
「辛さの段階が1〜5までございます。どちらになさいますか?」
と尋ねられたので、
そこそこ辛いもの好きな私は、
「5でお願いします!」
と言いました。
「かしこまりました。
次に、麺をお選びいただくのですが、3種類ございます。中華麺、こんにゃく麺‥
と説明し始めたので私は、
(ふふふ、みなまで言うな。
私はもう麺の種類は心得ている。)
と思っていたら、
‥うどん、あとはごはんからお選びいただけます!」
(みなまで言われとるがなー!)
「あっ‥(結構な間)‥こんにゃく麺でお願いします。」
「かしこまりました!おかけになってお待ちください。」
話は最後まで聞くもので、
変な妄想はひとりの時にだけやろうとかたく心に誓ったのでした。
妙な茶番をしていると変に慌てる。
(さっ。あとは出てくるのを待つだけだな。)
コートを脱ぎながら、
毎度の店内チェックをし始めます。
このお店のターゲット層が女性なせいか、
コートをかけるハンガー、
バッグをかけるフックはもちろんのこと、
カウンターにはラミネート加工された“一輪 おもてなし”という5箇条。
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・にんにく抜きできます
・紙エプロンございます
・ブレスケアございます
・髪留めございます
・爪楊枝ございます
※お気軽にスタッフまで※
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もはや4つ星ホテル顔負けのおもてなし。
爪楊枝の特記は
(要るか?)
と思ったものの、
私も歳をとり歯ぐきが痩せてきたせいか、
日頃からこの爪楊枝というアイテムの必要性を深く考えるようになったので、
(ふむ、必要じゃ!)
と思いなおすことに。
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「お待たせしました!“辛麺”の5です!(ドンッ!)」
(どひゃー!赤いーっ!うまそげぇーい!)
まずは冷えた体をあたためるためにスープをすすります。
酸味のないトムヤムクンのようなサラっとした口当たり。
辛さは5でも悶えるほどではなく、旨辛の領域。
そしてここのレンゲ。
やたらデカイんです。
(なんのためじゃ‥?)
その訳は最後までわからなかったものの、
スープ好きな私としては好都合。
一気にたくさんのスープを冷ますことができます。
そして興味津々のこんにゃく麺はというと、
白滝よりも細く、
お箸でもつかんでも、
(あら不思議、すべらない!)
なかば通販番組みたいなことをしてから、
ズルズル、ズルズル‥
この赤き勇者“トウガラ氏”が絶妙に絡み、
(ぬはー、旨辛最高潮!プトレマイオス朝!)
しかもこんにゃくってだけで、
罪悪感がなくなるマジック。
(まぁ、こんなにもスープ飲んで塩分とってるんだからイーブンだよな。)
美味いものはカロリーがあるから美味いんです。
また、ふわっふわのニラ玉はというと、
この辛さを更にマイルドにしてくれて、
(グッジョ〜ブ!)
全体の量もちょうど良く、
下に沈んだ赤き勇者“トウガラ氏”も全て救助し(※食べたの意)、
完食!!!
宮崎発祥“辛麺”。
これは流行りますぞ。
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そういえば。
1席はさんで、私の左隣には、
ロックな格好のあんちゃん、
その左隣には、
Paul&Joe系女子が座っていて、
その方々のどちらかが、
麺をすする度に、
「(ムホンッ!)」
と、音もなくむせていました。
“むせる”とも微妙に違っていて、
不発だったくしゃみのような、
ちょっと笑いたくなる、妙な不発音。
(激辛の食べ物って、変に吸いこんじゃうとむせるよね‥わかるよ、あたしゃぁ、わかるよ!)
と思っていたのですが、
口に入れる度にその不発音が奏でられるので、
次第に
(かわいそう‥)
と思えてきました。
たぶん犯人は、
ロックな格好のあんちゃん
だったんだと思いますが、
ただただ、
当人が気にしていないことを願います。
アーメン。